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金子氏のリードで話しが進む

原将人氏(映画監督)
日本のインデペンデント映画の第一人者

吉増剛造氏(詩人)
いわずと知れた現代詩の巨人
GOZO CINE

 

 

 

 

   
     
 

 去る1月29日(金)~31日(日)までの3日間、東京都港区広尾にあるギャラリー、TOKIO Out of Placeにて「奈良前衛映画祭in東京」が開催された。
 30日(土)には、『ぬばたまの宇宙の闇に』(金子遊/08年/59分)の「奈良前衛映画祭2009 NAC賞(最優秀作品)」受賞を記念してイベントを開催。そこに今回の金子監督の受賞を祝い、詩人の吉増剛造氏、映画監督の原将人氏といったスペシャルなゲストが駈けつけてくれた。
 
 そのイベント「吉増剛造×原将人 即興ライヴ&トーク」の第1部では、受賞作家・金子遊氏が撮った新作ドキュメンタリー『ベオグラード1999』を上映。第2部では、『ぬばたまの宇宙の闇に』、原将人『百代の過客』(93年/ビデオ)のダイジェスト版を上映し、そこへ吉増剛造の映像作品gozo cineの新作『尾花沢』の上映も加わり、熱っぽいトークがくり広げられた。3人の対話は道なき道をかき分けながら、詩と映画の関わりの先に開けてくる未知のヴィジョンの方へと向かった。
金子氏は自身の作品について、実験映画の伝統的手法である「フィルム日記」の外部へ向かうものと位置づけ、8ミリフィルムの断片を微速度で見せる手法を、「軌跡」というスローシャッター機能を使うgozo cineのスタイルや、原将人のスロー映写と関連づけて説明した。

 それに原将人は敏感に反応し、記録性や日常的な時間を離れたところで「映像によって音楽を奏でる」という、自分の映画の試みを語った。吉増剛造は生涯をかけて松尾芭蕉の足跡を追っていることもあり、原将人とその息子が芭蕉と曾良に姿を重ねて旅をした『百代の過客』というロードムービーに強い関心を寄せた。
 吉増剛造によれば、芭蕉の『おくの細道』の世界を研究的に解明するのではなく、その足跡を追いながら自身で俳句を読み、旅を続ける営為には、より根源的な詩的直観があるという。そして、歌枕を訪ねるように、芭蕉の足跡を映像によってなぞる自身の試みにも、旅や移動に何かがあるというより、歩行によって音楽的な「トーン(声調)」へ近づいていくという目論みかもしれないと結んだ。

 それから、原将人が電子ピアノへむかい、来年公開予定の劇映画『あなたにゐてほしい』から「あまがける」を演奏。サウンドトラックがCD化された映画『初国知所之天皇』からは、「旅に出る唄」と「数限りない…」を弾き語りした。還暦が近づき、しわがれてきた原将人の声色に会場はしばらくの間、酔いしれた。
 その演奏の様子を、吉増剛造がハンディなビデオカメラで撮影し、ときには被写体の原将人に数センチまで近づき、ときには口に咥えたサヌカイトで演奏に参加し、ときには摺り足で「歩行」を見せながら、gozo cineを聴衆の前で撮影するという前例のないパフォーマンスを披露。
 ステージが温まったところで、原将人はバッハの練習曲風にまとめたピアノ曲を披露し、吉増剛造は床を踏みしめ、声をかすらせ、あるいは声のトーンを自在に変幻させながら、09年9月に書いたという詩を朗読。かつて「グラヌール」という小雑誌があったというフレーズから始まり、おくの細道の東北やニューヨークの地を想像力で結びながら、自身の姿勢を「落ち穂拾い」の身体に重ねていくという、まるでその夜のために書かれたような詩作品であった。

 
 

イベントの当日の映像はこちらから (撮影:友利栄太郎)